渡辺トモミの憂鬱

JUMP

2009年12月03日 18:55

ハルヒっぽくしてみました。

と言っても私はまだコミック版しか読んでない。
わかさまこと歌若師匠からも、
ずっと見ろ見ろ言われてるんだが、
なかなか新しいものに手がでない現状です。

まあ、舞台が地元に近いらしいんで、
やっぱり一度は見なきゃいかんだろうな。
よし、就職決まったら見てみよう。


拍手ありがとうございます。

続きはいつもの感じで身内ネタ。
今日はガンオタはお休み。


この物語は、ダンシングブレードエンジェルと言われた、
不世出の女子レスラー、
渡辺智美の半生を描いたパロディである。


ともみ    「っていきなりパロディなの」


これまでのあらすじ

「私、歌って踊れるレスラーになる」
そういって、讃岐うどんを手土産に、
故郷の高松を後にした智美は
様々な紆余曲折を経て、
(この紆余曲折については、
小社刊「やってやるって!」
著者 シロー氏をご覧ください)
ようやくかねてからの希望通り、
格闘新喜劇団体ハッスルエンジェルスに入団した。

昼間はレスリングの基礎トレーニング、
夜はダンスレッスン、ボイストレーニングと、
眠る暇もないほど忙しい日々であったが、
「これが私の生きる道よ」
と心に決めた以上は弱音をはいてる場合ではなかった。

同僚で既にデビューしているディアナ・ライアル、
白石なぎさ、
同郷の先輩であり、
格闘新喜劇界で確固たる地位を築いているメイデン桜崎、
辛い練習ではあったが、
心優しい彼女たちの支えもあって、
なんとかデビューの日を迎える

久しぶりの新人デビューということで、
智美の所属団体ハッスルエンジェルスにおいても、
業界内で敏腕社長として知られるJ(独身)が、
デビューに合わせて、大々的にキャンペーンを行い、
お披露目興業(立川柴崎体育館)は超満員、
その内容についても、
各紙の評価は決して悪いものではなく、
むしろ新人としては破格のカラーページに
取り上げられるといった案配であった。

その後の地方巡業においても、
デビューしたての新人智美の演舞は、
各地で絶賛された。

曰く
「智ちゃんのダンスに涙が止まりません」
(東京都 23歳 OL)
「桃天使の再来」
(兵庫県 40歳 自由業)
「これはヨシモトを超えたスペクタクルである」
(千葉県 30歳 自由業)
「おっぱい、おっぱい」
(神奈川県 29歳 会社員)

新天地で順風満帆のスタートを切ったかのように見えた智美であったが、
運命はまだ彼女をもてあそぶつもりのようであった。

業界誌で最も権威のある、
レッスルエンジェルス愛の人気ランキング。
新人、ベテラン関係なく、
ほんの一刹那でも輝いたものたちに与えられる栄誉であり、
このランキングでTOP3になろうものなら、
スターダムへの階段が約束される。
所属団体の長であるJにしてみても、
このために大々的なキャンペーンを行い、
この一か月は智美を一押しで使ってきたのであった。
しかし、あれだけ投資してきたにもかかわらず、
結果はランキング外、
TOP3どころか名前すらでない惨憺たる結果であった。

「これは何かの間違いだ」
団体社長であるJ、その秘書である井上霧子が、
各方面からも確認してみたのだが、
なんらの不正行為も発見できず、
順位に変動が加えられることもなかった。

スターへの階段を踏み外したどころか、
その下の床までぶち抜いて、
一気に地下迷宮においてけぼりにされた感のある智美に、
運命は落ち込む暇さえあたえなかった。

ランキング発表から3日後、
社長室に呼び出された智美は、
Jから無慈悲な言葉をつきつけられた。

「智美、お前しばらく寮の賄いの手伝いしてや」

「えっ?!」

「いや、おばちゃんがなぁ、
息子のところで世話になる言い出して、
急な話で募集もしてないし・・・」

いろいろと説明をしているJであったが、
最早、智美の耳にその言葉は届いてないようであった、
ただ、社長室を出るときに、
背中越しにJがぽつりとつぶやいた一言を除いて。

「智美、エースをねらえ」



SCENE1. 東京郊外H市 ハッスルエンジェルス寮 厨房

ハッスルエンジェルスの朝は早い。

社長室での会話から一週間、
今朝も智美は夜明け前から厨房で、
朝食の仕込みをしていた。

「一つ切っては芸のため~、
二つ剥いては人気のため~・・・」

「ともみさん、元気出してくだサイ」

弟妹が大勢いるせいか、
世話好きなディアナは、
一昨日から智美と一緒に仕込みを手伝ってくれていた。
だが、そんなディアナに声をかけられても、
顔をあげた智美の眼はうつろなままであった。

「ありがとう、ディアナ、いつもごめんね」

自分なりには精いっぱい元気にふるまったつもりだが、
それがディアナには余計痛々しく見えた。
そんな精いっぱいの智美の強がりに、
ディアナもなんとか笑顔を作ろうとする。

「アハ、私はブラジルで弟や妹の面倒見てましたから、
それに和食のレシピも覚えたいし、
弟たちにお味噌汁を作ってあげたいんデス」

こちらにスカウトされてきたときに、
業界内でも大食いかつグルメで有名な
ソニックキャットの付き人をやっていたディアナは、
実は料理の腕はかなり鍛えられている。
味噌汁どころか、材料さえあれば、
京風懐石だって作れるはずだ。
まだ、この団体では日が浅い智美ではあるが、
その情報はキャッチしていた。
ただ、ディアナの心遣いが嬉しかった。

食堂の壁に掛けられた時計が
5時を指そうかという時、
ガラッと入り口のドアが開いた。
起きてるのか寝てるのかわからない、
夢遊病者のような足取りで、
厨房に白石なぎさが入ってきた。

「・・・おはよう」

ちょうどジャガイモの皮を剥き終えた智美も顔をあげて答える。

「おはよう・・・、ってなぎさちゃん早くない」

「モーニン、ちゃんと起きれましたネ」

「えっ、今日なんかあるの?」

智美の質問を背中で聞きながら、
なぎさは壁にかけてあったエプロンを取った。

「・・・今日から手伝うの」

なぎさの言葉が理解できないのか、
智美はディアナのほうに顔を向ける。
それに対して、ディアナはにっこり微笑んだ。

「えっ、手伝うって・・・なぎさちゃんが?」

再びなぎさに視線を戻すと、
まだ眠たいのか、目をこすりながら、
エプロンを着けようと悪戦苦闘しているなぎさがいた。

「んしょ、頭がとおらない・・・」

見るに見かねてディアナが手伝いに行く。
その様子を見ているうちに、
智美の眼には涙があふれてきた。
私はまだ何も失ったわけではない、
大切な仲間もいるんだ。

「二人とも・・・ありがとう」

下を向いたまま、ぽつりとつぶやいただけの、
智美の言葉であったが、
なぎさとディアナにはしっかりと届いていたようである。
なぎさのエプロンをつけ終えた二人の顔には、
満足げな笑みが浮かんでいた。

時計の針は6時を回っている、
そろそろ他の団員達も起きてくるころだ。
そして、この日の朝一番で食堂に入ってきた選手は、
智美にとって大切な仲間であり、
同郷の尊敬する先輩でもある桜崎美咲であった。

「モルゲン」

「おはようございます」

「おはようございマス」

「・・・おはよう、ございます」

厨房から口々に挨拶する三人に、
軽く右手をあげた美咲はテーブルにはつかず、
そのまま壁に貼られている一枚のポスターの前に立った。
そういえば、左手には紙筒を持っている。

「ふう~、ナベトモキャンペーンか」

そういうと、智美のポスターに手をかけて、
次の瞬間ビリビリと引き裂いた。
ポスターの破れる音が食堂中に反響する。

「!」

何が起こったか分からない三人が顔を上げる。
そんなことはおかまいなしでポスターを破り終えた美咲は、
今度は自分の持ってきた紙筒から、
新しいポスターを取り出して、
いそいそと貼り始める。

「とも、ゴミの片付けよろしく」

美咲に声をかけられ厨房から出てきた智美は、
床に無残に散らかった自分のポスターを、
じっと見つめた。
そして、泣きそうになるのをこらえながら顔をあげると、
美咲がちょうどポスターを貼り終えていた。

『祝!ランキング1位 メイデン桜崎』



「やっぱりこうでなくっちゃね」

信じていた先輩のあまりの仕打ちに、
智美は自分の心が黒く染まっていくのを感じた。

つづく





J      「というわけで」

ディアナ  「長くなっちゃったので続きマス。
       見てください」
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